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養育費の支払いが滞ったとき
養育費が不払いになる原因として考えられること
日本では、父親の経済事情に問題がある場合だけでなく、支払い能力があるのに支払わないという「養育費の不払い」が大変多いのが現状です。
不払いとなる原因の多くは、父親に支払い能力がないからではないことも数字上判明しており、養育費を払わない父親の年収が200万円以下のケースは全体の20%程度、残り80%は支払い能力があるにも関わらず養育費の支払いを拒んでいるのです。
原因として、別れた妻との間できた子どもであり、親権が妻にあることで、子どもとの距離を感じていることがあげられます。またもともとあまり子どもとの交流がなかった子どもとの絆が薄い父親は、離婚後養育費を支払うことに疑問を感じてしまうようです。
どれほど収入が多かったとしても、お金使いが荒ければ支出が収入を上回ることもあり、子どもの養育費を支払うだけのお金が手元に残らないケースもあります。
離婚の原因が夫のギャンブルや借金である場合、夫に支払能力がない可能性は大きいのです。その様な場合に夫の祖父母への請求が発生しますが、祖父母は養育義務があったとしても、強い執行力はありません。
最も大きな可能性として、子どもとの相性が悪かった場合です。子どもに愛情を感じない父親もいます。まして離婚の際に母親に同情して父親に反発心を持っている場合、子どもは父親になつかなかったり、距離を取るようになったりします。父親もその様な子どもの感情を敏感に感じ取り、離婚前から父子関係はぎくしゃくしています。
離婚をした場合、絆が完全に断たれてしまうこともあり、愛情を感じることもできない子どものためにお金を支払うことに前向きになれないのです。さらに父親が再婚して新たに子どもができた場合、前妻との間の子どもは養育費不払いと共に忘れ去ってしまうこともあります。
しかし、どの様な理由で不払いが発生しても、父親である以上養育費を支払わないという選択肢はありません。父親の義務として、支出を減らし養育費を捻出しなければなりません。
可能であればまずは文書や電話などで交渉してみる
督促は気が進まないため、不払いを見過ごすケースもあります。母親が生活保護を受けるケースも多く、貧困に苦しんでいるのです。
ですが親の離婚で子どもが満足に教育を受けられなかったり、衣食住が圧倒的に不足するようなことがあってはいけません。離婚しても両親である事実は変わらないと気持ちを強く持ち、今の経済状況と子どもに必要なお金について、電話や手紙で連絡をし、場合によっては直接会って話し合い説得を試みる必要もあるでしょう。
その際は、話し合いのテーブルに夫の両親を同席させることも手段として有効です。夫の両親も孫に会う権利があり、孫との面会交流をきっかけに養育費の支払いに応じる様、息子を説得する可能性があります。
別れていても親子に変わりはありません。子どもの成長とともに父子の関係に変化が生じる可能性もありますが、そのような際にも、面会交流は自分が子どもの父親であることを自覚させるためにも必要不可欠なものとなるでしょう。
夫が養育費を支払ってくれない場合、どうすればいいですか?
どんなに養育費が必要であることを訴えかけても拒否するならば、最終的には法的手段に出るしかありません。養育費の不払い率があまりにも高く、支払う必要がないと考える父親が多いことは、弁護士費用保険の全国母子世帯等調査のデータからわかります。
それによると1,332の母子世帯の調査で、60%が養育費を受けたことがないと回答しています。過去に養育費を受けたことがある世帯が16%、継続して受けていると回答している世帯が20%足らずなのです。
離婚が成立する前に、養育費の支払いについての話し合いを行っていたとしても、その結果が文章で残されていることが少ないのも原因のひとつです。口頭での約束は、悪意の有無に関わらず、お互いが自分に都合のよいように解釈しますから、不払いにつながる可能性は高くなるといえます。
一番確実なのは「前夫と自分の合意が確認できる文章(合意書など)」が残っていることです。合意書には養育費の金額や期間、支払の方法や支払日など、できるだけ具体的な取り決めを盛り込み、お互いの署名・捺印があれば、後で争うことも少なくなるでしょう。
また合意書を作成する際、できれば「公正証書」にしておかれるのがおすすめです。公正証書は、夫婦だけで合意するのではなく、公証役場の公証人を第三者の証人として作成するものです。もちろん自分たちだけで合意書を作るより、多少のお金と手間はかかるのですが、実はとても大きなメリットがあるのです。
それは「前夫が約束を守らなかった場合、裁判をしなくても裁判所を通じた差し押さえが行える」という点にあります。これだけだと判りにくいと思いますのでこれについて、少し判りやすく説明してみましょう。
まず、夫が養育費をお互いで取り決めた通りに支払ってくれない場合、強制的に支払ってもらう方法として「差し押さえ」という方法があります。差し押さえは裁判所を通じて、相手の銀行口座や給与などに対して行うことができます。しかし、「どのような方法で約束したか」によって、差し押さえまでの手間と時間が大きく変わるのです。
口頭だけの口約束だけで取り決めた場合
裁判所へ調停や裁判を起こし、和解調書や判決により養育費の額や期間などを決めてもらう必要があります。そして、養育費についての詳細(債務名義といいます)が出た後、その債務名義をもって再度裁判所から前夫の給与や銀行口座を差し押さえてもらいます。この方法は、差し押さえまでに調停や裁判を経るため、数ヶ月(時には数年)の時間がかかってしまいます。
それでも何も文章に残していない場合には、今すぐ話し合った当時の内容を思い出せる範囲で書き出し、いつ(できれば時間まで正確に)、どのような内容を話し合い、どのような結論に至ったのかなど、できるだけ細かく記載しておくことをおすすめします。
二人だけで作った(公正証書ではない)合意書の場合
基本的には口約束の場合と同様、調停や裁判を起こして、和解して和解調書を得るか、裁判長による判決を待つこととなります。しかし口約束の場合とは違い、お互いに合意した文章がありますから内容(例えば、養育費の額や期間など)について「言った、言わない」の水掛け論になることは防げる分、終了までの時間が短縮されることは期待できます。とは言えやはり差し押さえまでには、数ヶ月の期間は覚悟する必要があります。
公正証書により合意書の場合
裁判所へ調停や和解を申し立てることなく、いきなり前夫の給与や銀行口座を差し押さえることが可能です。裁判の結果を待つ必要もありませんし、公証人が証人となっていますので、養育費支払いの内容について、前夫と水掛け論になることもありません。
いかがでしょうか。養育費の支払いについて取り決めた際、事前に「公正証書」として作成しておくメリットを理解頂けたのではないでしょうか。
公正証書の作成は、自分ですることもできますが、不安であれば司法書士や行政書士、弁護士などの専門家に依頼することも可能です。そのため「めんどくさい」とか「費用がかかりそうだ」と思っても、後でかかる手間や時間を考えれば、公正証書による合意書をおすすめします。
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